はじめに|ふとした再会が、胸をあたためてくれる
「先生、覚えてますか?」
「子どもが保育士を目指していて…相談したいって言ってるんです」
ある日、20年以上前に担当した当時2歳の教え子の保護者から、そんな連絡をもらいました。
お子さんは、働きながら保育士を目指すことを決め、私が園長をしていた系列園でパートとして勤め始めました。
本人はきっと、私のことなんて覚えていなかったと思います。
でも――お母さんが連絡をくれた、その気持ちが何より嬉しかった。
子どもたちの未来に、少しでも関われること。
それが、保育という仕事の最大の“ごほうび”なのかもしれません。
卒園しても、心のつながりは続いていく
学童時代に関わった子どもたちの中には、
私が職場を異動しても、わざわざ会いに来てくれたり、
高校進学や就職、成人式――人生の節目に連絡をくれる子もいます。
「今、こんなことしてます!」
「てんちゃん(学童ではあだなで呼ばれてました)!ご飯行きましょう!」
そんな一言が、どれほど心にしみるか。
一緒に笑って、泣いて、時にはぶつかって。
その時間が、子どもにとっても“ちゃんと意味のある記憶”になっている。
そう思えるだけで、保育の道を選んでよかったと心から思えます。
保護者との再会が教えてくれる“見守る力”の大切さ
ある日、昔の保護者と再会したとき、こんな言葉をもらいました。
「あのとき、てん先生が多くを語らず見守ってくれて…」
「“大丈夫。乗り越える力があるから、信じて待ちましょう”って言ってくれたのが、今も忘れられません」
「あの言葉があったから、子どもを信じて見守ることができました」
「いま、こんなにのびのびと自分の好きなことを楽しんでいます」
あぁ、ちゃんと届いていたんだ――
その瞬間、自分の保育に自信を持てた気がしました。
【てんのちょっぴり辛口コメント】
正直に言えば、「この子、本当に大丈夫…?」と悩んだ子もいました。
人見知り、癇癪、自己主張の強さ――
どの子にも、個性と難しさがありました。
でも、子どもはちゃんと成長します。
時間と環境、そして「信じてくれる誰か」がいれば、
その子なりのペースで必ず前に進んでいきます。
だから、親御さんに伝えたい。
「その子の未来を、想像してほしい」
きっといつか、びっくりするくらい成長した姿で、あなたの前に現れてくれます。
【てんからのメッセージ】
保育や子育ては「今すぐ成果が見えるもの」ではありません。
でも、信じて待って、積み重ねた日々は、未来できっと返ってきます。
今、「どうしてこの子はこうなんだろう…」と悩んでいるあなたへ。
その毎日の関わりが、確実に“心の土台”になっています。
笑えなかった日。
言いすぎた日。
泣いてしまった日。
それでも、「見守ってるよ」「信じてるよ」と子どもに伝えられたなら、それで大丈夫。
保育も、子育ても、“信じる力”がすべてのはじまりです。